国賓として来日したトランプ米大統領が2019(令和元)年5月28日、神奈川県横須賀市の海上自衛隊横須賀基地でヘリコプター搭載護衛艦(DDH)かがに搭乗し、視察した。新聞やテレビの報道は「政府は『かが』の甲板を今後改修し、短距離で離陸し、垂直に着陸できるステルス戦闘機F35Bを使えるようにし、事実上の空母化を進める予定」と伝えた。
「海上自衛隊が空母を持つ日」がやってきたのだ。
「海上自衛隊が空母を持つ日」がやってきたのだ。
ここで千田武志氏の著書「呉海軍工廠の形成」を読み返す。日本の軍事技術の出発点を語っている。
「おわりに」で本書の結論を大要、以下のように記す。
「おわりに」で本書の結論を大要、以下のように記す。
…日本海軍は、ヨーロッパ、アメリカ以外の後発資本主義国のなかで唯一、兵器の国産化を短期間のうちに実現した。それを可能にした最大の原因は、鋼鉄船の建造もままならない段階で、先進国が生産し導入している戦艦と搭載兵器の保有と生産を目指して、長期的展望にもとづいて全体計画を作成し、その目的を段階的に実現してきたことにあった。
一方、崇高にみえる目的は、日本の国力に見合った軍備の保有を唱える主船局と、日本の独立を維持するために戦艦の保有と生産を主張する軍事部との論争を打ち切り、軍事部系の者のみを省内の中枢に据えることによって決定したこともあって、国力との整合性に欠けるものであった。また重要事項について全容を知りうるのは一部の幹部や政府の要人に限られるという秘密主義に加え、第三船台の偽装に代表される不正も存在した。それにもかかわらずそれらは、海軍の発展のためひいては日本のために必要なことと認識され、改革しようという機運はなかった。
こうした海軍の長所と短所は、基本的に明治期に形成されていたように思われる。…
一方、崇高にみえる目的は、日本の国力に見合った軍備の保有を唱える主船局と、日本の独立を維持するために戦艦の保有と生産を主張する軍事部との論争を打ち切り、軍事部系の者のみを省内の中枢に据えることによって決定したこともあって、国力との整合性に欠けるものであった。また重要事項について全容を知りうるのは一部の幹部や政府の要人に限られるという秘密主義に加え、第三船台の偽装に代表される不正も存在した。それにもかかわらずそれらは、海軍の発展のためひいては日本のために必要なことと認識され、改革しようという機運はなかった。
こうした海軍の長所と短所は、基本的に明治期に形成されていたように思われる。…
戦艦大和を語る時、必ず出る指摘は「大艦巨砲主義の弊害」だが、大艦巨砲主義は明治前期の「戦艦保有を国力に相談することなく推し進めた」政策から始まっていた。
戦艦大和を含む厖大な海軍予算を審議する1937(昭和12)年前後の国会で野党議員は盛んに「民力涵養」を訴えるが、ワシントン海軍軍備条約脱退後の国際的孤立の危機感に跳ね返される。
また、戦艦大和の建造予算は、その実態を覆い隠すために同予算を分割し、小さく見せた。
予算の偽造だが、明治期の呉鎮守府の第三船台でも行われていた。戦艦を建造する船台をつくるために予算を流用した事実を千田氏著「呉海軍工廠の形成」は資料を基に明らかにした。
組織のやることは、その最初に理由が詰まっている。俗にいえば「三つ子の魂百まで」だ。
戦艦大和に至る旧海軍の歴史を踏まえると、海上自衛隊が持とうとするいわゆる「空母」は、国力に見合ったものか、正々堂々、納税者の前で必要性を語ってきたのか―は検証に値する。
戦艦大和を含む厖大な海軍予算を審議する1937(昭和12)年前後の国会で野党議員は盛んに「民力涵養」を訴えるが、ワシントン海軍軍備条約脱退後の国際的孤立の危機感に跳ね返される。
また、戦艦大和の建造予算は、その実態を覆い隠すために同予算を分割し、小さく見せた。
予算の偽造だが、明治期の呉鎮守府の第三船台でも行われていた。戦艦を建造する船台をつくるために予算を流用した事実を千田氏著「呉海軍工廠の形成」は資料を基に明らかにした。
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戦艦大和に至る旧海軍の歴史を踏まえると、海上自衛隊が持とうとするいわゆる「空母」は、国力に見合ったものか、正々堂々、納税者の前で必要性を語ってきたのか―は検証に値する。
「波頭」内の文章、写真、図表、地図を筆者渡辺圭司の許可なく使用することを禁止します。
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