紀伊水道を望む和歌山市雑賀崎。崖の上に大砲を据える台場と防塁が残る。幕末、「黒船」に備えて紀州藩が造った「雑賀崎台場」だ。私はここに「なぜ、時代錯誤の大艦巨砲、戦艦大和を建造したのか」という疑問を解決する出発点を見出す。
江戸時代後期の1854年から、紀州藩は和歌山市加太━海南市下津町大崎間の海岸線約40キロに異国船に対する海上防衛のために砲台と防塁を33カ所築造した。和歌山市雑賀崎の「雑賀崎台場」はその一つだ。2010(平成22)年、和歌山県文化財に指定された。
2015(平成27)年4月、「小梅日記を楽しむ会」(中村純子会長、27人)は同台場を見学した。私は会員の一人として参加した。
「小梅日記」とは紀州藩士の妻、川合小梅(1804-89)が徳川幕府の末期、1850年代から明治維新をはさんで明治20年代までの約40年間、途中欠落があるものの延々書き連ねた日記で、現在は平凡社刊の東洋文庫に3分冊となって収められている。
同日記は「黒船」対応で各藩士が具足を求めててんやわんやの大騒ぎをする様子を描写している。その辺の記述を理解しようと「雑賀崎台場」を見学した。
防塁は石垣で土止めをした高台の上に高さ1mほどに平たい石を積み上げており、いかにも急ごしらえという造りだ。当時の切羽詰まった雰囲気を感じる。
「小梅日記」の内容は、家計、贈答、おすそ分け、家族の動き、親戚付き合いを記録し、当時の暮らしぶりをたどることができる。酒をお茶代わりのように来客に出している記述がほぼ毎日でてくる。
同じようなことを私は経験した。新聞記者になって初任地が和歌山市だった。1970年ごろ、同市内一番の商店街ぶらくり丁のある商店を昼間、取材で訪れた。応対に出た老店主は箱を出して、中から白くて平たいお猪口を差しだし、何かを少し注いで差しだした。酒だった。昼間から酒を出すとは、と驚いたが、当地の習慣かと頂いた。その後の話が弾んだ覚えがある。
その後、「小梅日記」で酒接待を知り、当時の酒を出す習慣がぶらくり丁の歴史が古い商店に今も残っていた、と推察する。と同時に、明治以降、兵役、会社勤めが社会生活の柱となるにつれ、酒は茶飯事から姿を消したのではないか、とも思う。
「小梅日記」の特徴は、社会情勢の記録だ。坂本竜馬の暗殺など京都の政治情勢や大阪の一揆、各地の「ええじゃないか」情報、幕末のデフレに苦しむ庶民の姿、また自身の家計のやりくりを克明に記述する。紀州藩藩校の督学(今で言う学長)だった夫から得た紀州藩の情報や近所のうわさ話を丹念に拾っている。
その中で特筆すべきは「黒船」だ。
2015(平成27)年4月、「小梅日記を楽しむ会」(中村純子会長、27人)は同台場を見学した。私は会員の一人として参加した。
「小梅日記」とは紀州藩士の妻、川合小梅(1804-89)が徳川幕府の末期、1850年代から明治維新をはさんで明治20年代までの約40年間、途中欠落があるものの延々書き連ねた日記で、現在は平凡社刊の東洋文庫に3分冊となって収められている。
同日記は「黒船」対応で各藩士が具足を求めててんやわんやの大騒ぎをする様子を描写している。その辺の記述を理解しようと「雑賀崎台場」を見学した。
防塁は石垣で土止めをした高台の上に高さ1mほどに平たい石を積み上げており、いかにも急ごしらえという造りだ。当時の切羽詰まった雰囲気を感じる。
「小梅日記」の内容は、家計、贈答、おすそ分け、家族の動き、親戚付き合いを記録し、当時の暮らしぶりをたどることができる。酒をお茶代わりのように来客に出している記述がほぼ毎日でてくる。
同じようなことを私は経験した。新聞記者になって初任地が和歌山市だった。1970年ごろ、同市内一番の商店街ぶらくり丁のある商店を昼間、取材で訪れた。応対に出た老店主は箱を出して、中から白くて平たいお猪口を差しだし、何かを少し注いで差しだした。酒だった。昼間から酒を出すとは、と驚いたが、当地の習慣かと頂いた。その後の話が弾んだ覚えがある。
その後、「小梅日記」で酒接待を知り、当時の酒を出す習慣がぶらくり丁の歴史が古い商店に今も残っていた、と推察する。と同時に、明治以降、兵役、会社勤めが社会生活の柱となるにつれ、酒は茶飯事から姿を消したのではないか、とも思う。
「小梅日記」の特徴は、社会情勢の記録だ。坂本竜馬の暗殺など京都の政治情勢や大阪の一揆、各地の「ええじゃないか」情報、幕末のデフレに苦しむ庶民の姿、また自身の家計のやりくりを克明に記述する。紀州藩藩校の督学(今で言う学長)だった夫から得た紀州藩の情報や近所のうわさ話を丹念に拾っている。
その中で特筆すべきは「黒船」だ。
「波頭」内の文章、写真、図表、地図を筆者渡辺圭司の許可なく使用することを禁止します。
問い合わせ、ご指摘、ご意見はCONTACTよりお願いします。
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